2017年1月13日(金)
「本格的な琉球料理って食べてみたくない?」とオットが言うので
めんそ~れ~。沖縄来ましたー。スミマセン、ワタクシこにゃくうは「琉球料理」って言われても全くイメージ湧きません。
オット曰く、今や忘れ去られそうになっている、伝統にのっとった琉球料理を復活・伝承する料理屋さんが那覇市内にあるのだそうだ。
へー。・・・というわけで那覇空港から即、沖縄経済と行政の中心地である久茂地へ来たよ。
オフィス街の裏路地に古い古い民家がぽちっ、っと。取り残されてしまったかのようにビルの間に挟まっていた。
もう一度言おう。古い!が、古いのだけどボロいとは違う!ほ~・・・っと見惚れるような佇まい。
それが今宵のお店。「琉球料理 見榮 (みえ)」(HP)圧倒的な存在感だなぁ。
琉球風味のレトロ物件って見たことなかったものだから、どこを見ても素敵です。
お食事以前に、このお宅訪問で満足しそうなワタクシ。
後でお店の方に伺ったところによると、1960年築なんだそうですよ。
こんばんはー予約しました、こにゃくう夫婦でーす。食べたことない伝統的な琉球料理がいただける、ってうかがったので羽田からすっ飛んで来ました~。
かりゆし、っていうんでしたっけ?沖縄っぽいお召し物の女性が2階の個室に案内してくださいます。
2階最奥の「花」というお部屋です。60年経ったお家を丁寧に維持管理されています。
琉球料理にナニがあるかも知らないバカ女なので、ゴーヤチャンプルーは出そうもない雰囲気だな、くらいは察知できていますが。どんな料理なのかなー?
琉球料理って「沖縄料理」とは違うくくりのようだ。明治期まで独立した王国だった琉球には中国から伝わる食文化の影響が濃厚で日本のどの地域とも違う料理が発達していたらしい。沖縄ならではの調理法や食材。たのしみです。
まずは突出し。「しいたけ 豆腐よう煮」発酵味のある、やわらかい椎茸煮ですかね?つまみながらお酒の選択を。
いつもいつも日本酒かワインばっかりの我が家ですが今日は泡盛を中心に行くぞ。
最初のビールは当然、オリオン・ビールだよね。「いちばん桜」かー。日本一早い桜に因んだ春先取りのラベル。
「つるむらさきの酢の物」味付けは、相当に鰹出汁を利かせた合わせ酢。かつお節の香りが食欲を刺激するスターター。
そんな中、泡盛セットが登場。バクバク呑んじゃうので与那国をボトルで。アイスペールの陶器がステキだ。
泡盛って日本の酒なのに「タイ国産米」なのね。昔々の王朝時代の琉球は分かっていませんが
明治、大正、そして昭和になっても泡盛の原材米はタイ米が定番だったそうな。交易の流れからして、アジア諸国とのつながりの方が強かったのでしょう。泡盛は、日本酒とはちがうルーツを持つお酒なのか。
どう見たってシンプルで「お母さん!具、これだけ?」って家族の苦情が出そうな汁が登場。
「中身(なかみ)の吸い物」と。
この汁には恐ろしい程の手間暇がかかっている!
「なかみとは豚の胃袋と腸のことです。材料の性質上、この吸い物をつくるのにはたいへん手数がかかります。
脂身と汚れを取り除き、おから、もしくは小麦粉をまぶして、何度も水洗いをし、生姜と油で炒め湯がきます。
短冊に切り、何度も湯がき溢しをくりかえします。鰹だしと肉だしで合わせ汁を作り、具として中身をいれます」(HPより)
その作業に丸一日かけるのだそうだ。椀内の出汁が非常に濃い!豚の内臓臭が少々香るのだが、それが泡盛に非常に合って感動ですらある逸品!
スタートからガツン!とヤラレましたー。美榮の料理は、個性が溢れちゃってます。
次は美しい「前菜7種」彩り、バランス、配置も考えられておりセンスが光っている。
「くぶしみ」ハテ?
「一般的にはコブシメという烏賊です。これは飾り包丁で蟹を模している、花烏賊という料理です」
聞いたことない、沖縄特産の烏賊なんですね。
コチラ、牛蒡に豚肉すりおろしを入れて出汁で煮る。
細長くすりおろしたニンジンを加え、棒状にして揚げた蒲鉾。体積ちっちゃいのに凝ってます。
沖縄はすり身を使った蒲鉾料理が発達しました。暖かい気候では魚の運搬に不向きですものね。首里の王様であっても刺身は食べませんでしたとさ。蒲鉾には県の魚であるグルクンを使うのがしきたり、とのお話。
からし菜の汁を入れた蒲鉾。同じ蒲鉾でも↑のニンジン蒲鉾とは食感が違う。ニンジンは揚がってカリッと。からし菜はカッチリ硬め。
コチラのカステラ蒲鉾はふんわり食感。グルクンのすり身に卵を加え、型に入れて蒸し揚げた、という料理手法。
中央で堂々、王のごとし、の昆布巻き。コレ、我ら関東人がお正月に食べる昆布巻ニシンとは似て非なる物体。
「北前船が運んで来た昆布は中国との交易に使われる貴重品。故に、出汁に使うなどということはしませんでした」
昆布そのままの形を使って調理しているのね。中央部はカジキ。昆布がしっかりしたお味なので、カジキの淡泊さを補い滋味深いったらありゃしない!
葉巻のような形とサイズの物体「ぽーぽー」が最奥に。
小麦粉を水で溶いてクレープ状に。肉味噌が巻き込まれています」
北京ダックっぽい感じもする。もっちり食感とほんのりの柑橘香がイイ!
花烏賊だけは添えられた酢醤油に付けて食べるけど他の者はそのまま食べて、とのアドバイス。何もつけなくても申し分ない塩味と旨味です。
次!「じーまーみ豆腐」じーまーみ →地豆 ・・・つまり落花生のことだ。地豆をすり潰し、豆乳も。それを葛で固めた冷たい豆腐。胡麻豆腐よりも弾力と粘りがあり、箸で切るのが困難レベルw強烈なもっちり食感でクセになるわ、コレ。
見た目お地味な3点盛が来ました。食品に見えないヤツも入ってますなw
「豚ロースの脂身の無いところを薄切りに。摺った黒胡麻に、砂糖・赤酒・醤油を加えて黒胡麻ペーストを作ります。豚肉を胡麻ペーストに漬け込んで味が染みたら蒸し上げます」
だ、誰ですか、食品に見えないとか言ったのは!黒胡麻の香りが豊かで、蒸されているので豚がアッサリ。うまい!「みぬだる」という伝統的な琉球宮廷料理だそうです。
手前の三角カットの食品は「島大根の黒糖漬け」いわば、たくあんが沖縄に旅に出た感じ?のお漬物。色が真っ黒だけど、しょっぱい訳でなく意外にやさしい味のたくわん。
奥の半月型の食品は「たーむのから揚げ」たーむ →田芋だって。水田で採れる沖縄独特の芋だそうです。
「たーむを素揚げした後、砂糖・醤油にサッと潜らす」と仰る。超ウマイ。歯触りと噛みごたえが適度で、いわばライトなかりんとう?
これなら何だかわかる!「ラフテー」ですねっ。共に盛り付けられているのは「がんもどき」と「ゴーヤの油炒め」
ラードで炒めた、というゴーヤは苦味がしっかりあってワタクシ好み。近所のスーパーで買うゴーヤはマイルドでつまんないの~
「ミミガーのじーまみ酢和え」
沖縄では 「耳皮さしみ」 。酢の和え物の事を「さしみ」と呼んでいるって。これもまた、豚の耳皮や顔皮などそのままではとても食べられない部位をオイシイ!のレベルにまで手間をかけて昇華させているのでしょう。
「くーぶ・いりちー」
くーぶ →昆布のいりちー → 炒め物。昆布、ミミガ-、蒲鉾をラードで炒めた。
地味なルックスの昆布料理だけども、非常に奥深い味。味付けはほんの少しの砂糖と醤油だ、と言うのに。
最後のお食事に到達。「青パパイヤの糠漬け」と「とんぱんじゅーしー」
とんぱん → 豚飯 で じゅーしー →混ぜご飯。四角く刻んだ具材のあられがとりどりで、キレイな色彩だな。
美しいだけではなかった!圧倒的に濃厚な出汁!鰹と豚肩の合わせ出汁だそうです。ワタクシは関西圏のお料理屋さんの出汁文化って最高だと思ってますが、沖縄の正統派宮廷琉球料理の出汁使いも同じくらい感動的なのだと初しりしました。
最後に黒糖の寒天とサンピン茶。ジャスミンティーのことをサンピン茶といい、沖縄で一番飲まれる茶だそうです。
今まで琉球料理を食べたこともなかった自分には驚きと感動でした。明治以前の琉球国が、中国の影響を受けながらもオリジナリティ溢れる文化を誇っていたことを食から実感できました。
食事はコースのみで、3パターンあります。我々は真ん中の9000円コース。(ビール2本、焼酎与那国3合瓶、9千円コース×2=22700円のお会計でした。カード不可)
食いしん坊のお友達には是非おススメしたい。ただし、サーブがスローペースなので会話が無いカップルとかで来店するとツライかもよw