向附。北海道帆立、大分赤貝、甘いとまと、菜の花、きくらげ、こごみ、しいたけ
手前の朱塗の盃で冷酒を一献。(吉兆オリジナル冷酒とのこと)
帆立、赤貝は、品質が良いのがよく分かるシャッキリ食感。帆立の肝がねっとり濃厚。芳醇な出汁の酢ジュレでまとめて食べるとまあ!美味しい。
御椀。はまぐりのお汁。添えられているのは島根県十六島(うっぷるい)岩のり。後半、椀に入れて味と香りの変化を楽しみます
何より、この器の美しいこと!こーいう漆器を出してくるところがさすがの吉兆。「鎌倉・明月院所蔵の通称’明月椀’の写しです」(お部屋担当女性)見事な螺鈿細工です。輪島で特注された逸品だそうです。桜の季節にしか使えない椀にこのクオリティ。ムスメには指輪、腕時計は外して来るように言っておいてよかったー
蛤のうしお汁でした。食べやすいようにスライスされた蛤。吸い地はとてつもなく濃厚。蛤エキス状態だわ。葛豆腐が下に潜んでいるのですが、その高い粘度の為さらに濃厚に感じます。
造里 その1 目板鰈 (めいたかれい)
いろいろな薬味、醤油の他チリ酢でも召し上がってみてください、と。最左の小皿は昆布を薄揚げにしたもの。
この昆布の素揚げがヒットで、薬味としていただいても美味しい訳だけど、このまま直で摘まんでもおいしかったゾ。こーいう薬味やタレで変化をつけると「めいたかれいのお造り」を何通りにも味わえて満足度がアップするのだなあ。
目板鰈自体は洗いにしてあるようで、食感がシャックシャク!非常に張りがあるので、実は何もつけなくてもおいしい目板鰈でした。
御造里 その2 中トロと伊勢海老
もちろん天然クロマグロ(那智勝浦産)養殖じゃないので脂のノリが適度だし、鮪本来の身の旨味も味わえます。
周囲を香ばしく炙ってある伊勢海老。オレンジ色のトッピングは海老味噌。お造りの質の高さはもちろんですが、透かし彫りが入った雲錦手(うんきんで)の器が美しいこと!
筍 座敷焼き たいへん印象に残るお料理でした。おおきなお鉢に筍が。テーブル周辺は焼かれた筍の香りでいっぱいに。我らが「ををを~」とどよめく中・・・
サクサクと几帳前にテーブルが用意され、お若い調理の男性が登場。今、プレゼンされた焼き筍をさばくデモンストレーションが始まりましたよ。
お客様の目の前で捌く作業を見せるって緊張しませんかね?見ている方がドキドキしてきちゃう・・・
おひとり様分が供されました。器も筍の絵付であるよ!「大覚寺の奥、北嵯峨の朝どれ筍でございます」京都の筍といえば長岡京あたりが有名だけど、ココ嵐山の近くでも高品質の筍が獲れるのですね。筍は近い方が良いよね。
まずは何も付けずにそのまま食べてみます。まあ!栗のような甘さと焼き筍のすばらしい香り。次は刻んだ木の芽入りタレをくぐらせて、ふっかふかに盛られた削り節にまみれさせて食べてみたよ。
箸休 でしょうか?お祝いの席にふさわしく、水引柄のお椀です。
お赤飯がひとくち。ぽってりとやさしく炊かれたおこわでした。フツーよりやや柔らかめ。粘りあるもち米。甘くておいしいなあ。お餅が焦げた時の香ばしい香りも。
箸休めでひと息入れている頃、お庭に夜の気配が訪れたようです。合せるように、お部屋の照明がトーンダウンしました「あれれ?部屋が薄暗くなったよ」「あっ、コレ何か演出始まる的な?」
部屋の照明が落とされた中、お部屋担当女性が八寸を携えていらっしゃった。3人分だよ?重たいしぜったい傾けられないでしょ!細身の女性なのにすごい~
てか、この八寸もすごい。春の景色が箱庭のように展開。八寸は懐石料理に於ける盛りあがりのひとつですが、こんなにゴージャスで細部に神経を巡らせた八寸はワタクシ過去にいただいたことがありません。
しかも、夜のとばりがおりる時間に合わせるかのように(大根で作られた)仄かな雪洞と共にやってくるとはね。この演出は昼間であるランチでは無いでしょうから、ディナーならではかも。
芸術作品的八寸は、お部屋担当女性が取り分けてくださいます。その取り分け後も見事に美しく、おいしそう。我ら3名が注視する中、泰然と取り分ける彼女のスキルの高さ。
あっぱれ!さすがは嵐山吉兆のスタッフさん、と感心するのでした。
蛤に金箔の器の中は(たしかトリ貝)ぬた、ひとくちの牛ヒレ肉。蕗の中心には梅肉が射込まれ、美しいカーブの旨煮海老の上に卵の卵黄。焼魚は銀だら西京漬け。
あわび酢と北海道産雲丹。苦味を全く感じない雲丹だったので、ミョウバンを使っていない、塩水雲丹だと思います。
さて、次は・・・
小さいので身の部分の旨味、ワタの苦味が一気に楽しめる稚鮎。鰓への塩振りが丁寧なので、塩加減がジャストだし、パリパリ感が楽しめる。美しい焼き上がり姿で感心します。
ひとり2尾も楽しめてうれしいなあ。・・・とホクホクいただいていたら
「趣向を変えて、次は素揚げの稚鮎でございます」と、担当女性がワイルドな大皿に盛られた稚鮎をプレゼンしてくれました。わー、オイシソウ!「この器は北大路魯山人作でございます」ひっ(汗)
素揚げ稚鮎も、卓上の小さな七輪で温めつついただきます(炭火を熾した七輪です)塩焼とはまた違った旨味。少しの油は鮎の苦味と相性がいいのですね。
先ほどの魯山人作を洗った後、見せてくれました。ほんとだー!有名な「ロ」のサインが刻まれている~。恐れ入ります、吉兆さま。
山菜と鶏の炊合せ。わらび、うるい、独活などの山菜に、皮目を香ばしく焼いた鶏。天盛りの蕗の薹の素揚げの香りと苦みが春の味。
アルコール類の記録もちょこっと残しておこう。もちろん生ビールなどは無く、瓶ビールのみ。5種類の銘柄があったかと思いますがキリンラガーにしました。(1本 1000円)
我が家にとって大切な日本酒に於いては、獺祭二割三分4合瓶で21000円とか。黒龍 石田屋に至っては4合瓶 39000円!さすがのお値段です。そんな中、奇跡のように4合瓶7500円!この桜嵐だけが「我が家価格」で掲載されていました。
「群馬の、水芭蕉を造ってる永井酒造の酒だね」(オット)と、我が家の日本酒ソムリエ。十分おいしく、問題なかったです。酔いすぎてはいけないよとオットに釘を刺していたので、我が家には珍しく4合瓶1本だけで終了です。
再び、几帳前にテーブルが設えられ、今度は土鍋やお釜が並びました。コースは終盤に入った模様でお食事の準備です。
ど~ん!プレゼンされる桜海老ごはん彩りあざやかですね。パエリアのような豪華さと、ちらし寿司のような美しさを感じます。
はい、おいしそう!筍も入っていました。添えられた香の物が塩分上品で非常に食べやすい。桜海老ごはんはムスメとワタシでオカワリしまくり土鍋1杯完食ですw
別途、白米も炊かれていたのですが、そこまで行きつかなかったのが悔やまれる。さぞや美味しい白米だったことでしょーね。
果物 宮崎産マンゴー、静岡産紅ほっぺ、メロン 自家製でしょうね、オレンジのゼリーがザクザク食感でおいしかったなあ。錫のピッチャーに入っているのは自家製のカスタードソースで、卵黄含有率ハンパない高濃度な液体。お客様に評判が良いのです、というお話も納得。こんなソースが食べられる店って、そうは無いもの。
最後にお菓子。カスタードソースよりも実はワタシはこっちの方がウレシイ。
すはま団子も桜餅も厨房での手作り。だって桜餅の皮が、まだ出来立てでほの温かいんだもの。いい塩梅の塩味が餡の甘さを引き立ててます。美しいし、美味しい!
吉兆さんは、ほうじ茶の茶葉からして厨房で作っておられた。ほうじ茶があまりに美味しいので伺ったら「厨房で焙じて作ります」とのこと。あらゆる物が厨房メイドなんですね)
さて、懐石料理のフィナーレはコレ。
お抹茶。この1椀のためにこれまでの料理があります。美味しい一服でした。
※注意※以後2枚の画像はこれから吉兆でのお祝いの席を考えている方がいらしたら、ネタばらしになります。
ここでワタクシこにゃくう「あ」と声がでました。鶴はここにいたのです。お席の最後の最後。しかも席の主役であるワタシにだけ鶴。(ムスメとオットの茶碗は絵付ではなく文様の茶器でした)
最初にお部屋に案内された際、「お祝いの席なのでお軸はおめでたい亀を用意しました」と説明いただいきました。ムスメが「ん?亀と…鶴はどこ?」と呟いたのですが、その時お部屋担当女性はにっこりほほ笑むだけで返答をなさいませんでした。
答えは「最後に鶴は主役にだけ舞い降りる」という、そーいう演出になっていたのか。(担当女性は何も仰らなかったけどワタシが勝手にそう察した)
お食事を開始してから約3時間。お料理のおいしさと設えの粋なことに感嘆するばかりで、とてもそんなに時間が経っていたとは思えません。お庭の砂紋がライティング効果でくっきりと浮かび上がるPM 8:00。
嵐山吉兆本店の女将がお部屋にいらっしゃり、ご挨拶と共に香をしのばせた栞をくださいました。
女将、お部屋担当女性、焼き筍をさばいて下さった厨房男子のお三方に見送られ、待幸亭を出ます。昼間は賑やかだった嵐山は仮の姿か?と思えるほど、夜の桂川左岸は静寂な世界に変わっていました。
我らの姿が見えなくなるまでお見送りくださるお三方。
食いしん坊を貫いて今年も誕生日を迎える。うまいもん喰ったと言ってはYahooブログで綴り続けて14年経ったよ。何だか今宵はワタシの食道楽の集大成のような夜だったなあ。ごちそうさまでした。
6万円のお料理を3人でお願いしてアルコール、ミネラルウォーターいただいてあれやこれやで約25万円のお支払、イエ~イ ♪