
「この店には是非是非、行きたい」とオットにリクエストしていた
和食店です。
コンセプトは、料理に日本酒を合わせ、しかも器使いも楽しんで貰おうという
和食店と言ったら良いでしょうか。
4名収容の個室もありますが、我らはカウンター席。ゆったりしたピッチで7人着席です。きちんとしたお店は客同士のディスタンスも考慮されているのだ。
生ビールは無いのでハートランド(税別972円)でスタートです。久しぶりに飲んだけど、ハートランドって旨いわね。
器はふしきのさんの3主役のひとつ。をを、ぽってりとして土の感触がワイルド。唐津っぽいけど?
1)先付。長崎天然クエの焼き霜仕立て。京都産菊菜は水にさらしてあく抜きしてから味を含めるという丁寧な一品。ポン酢の出汁が激しく美味しい。焼き霜の香ばしさ!ほろ苦さを残した菊菜!ブラボー。
ふしきのでは日本酒も主役。さあ、何を合わせよう。チョイスは我が家の日本酒担当、オットに丸投げ。
綿屋の冬綿行ったろ。ガラス製のカラフェが素敵である。尚、ドリンクメニューはありません。日本酒ペアリング(6000円~)があるので、お店の方におまかせすることもできます。
2)椀盛。うをを~、コレコレ~(←壊れるワタクシ)塗り椀の蓋を開けたら、完璧な出汁と柚子の香りが秒で鼻腔を襲撃。漆黒の器に白味噌が映えるわぁ。海老芋と真鱈白子。蕪の芽と金時人参。
3)向付。鰤です。薬味として辛み大根、わさび菜。鰤の脂具合がさすがの天然、氷見産。爽やかでキレがある脂と引き締まった身を噛み締めるヨロコビ。
ぽってりと添えられた辛み大根が、まるで霙雪のように見えますわ。美しくて映える盛り付け方は参考にしたいものです。
氷見鰤にオットが選んだ日本酒は鍋島。ナイスチョイスですよオット。「香りが開くグラスをどうぞ」と口が開いていて、且つ鍋島のラベルデザインとリンクする酒器(10枚目画像に写ってます)を選んでくれたお店の方もナイスチョイスです。
お酒が進んできたところで供された、これは和紅茶。一般的にはやわらぎ水等を添えてくれますが、ふしきのさんは水出しの和紅茶を。スッキリしていて仄かな苦み。口中がニュートラルになります。水より効果的と思いました。
4)炊合せ。蓋椀を開けると柚子の香り。巻き湯葉、淀大根、ちぢみほうれん草と仰った。ああ、なんて美味しい出汁炊かれているのかしら。
3種目に選んだ「無窮天穏SAGA」ワタシはもちろん初しりのお酒。オットは「この蔵の酒で過去一美味しい。複雑な味わいで」とちょっと失礼なんだか褒めてるんだか判らない感想を言ってました。美味しかったですよ。
高価そうな和紙のラベルなのでした。それにコラボった片口をさり気なく合わせてくれる。島根の斐伊川和紙という古くから伝わる工芸品をラベルに用いている、とお店の方に教わりました。コースターに使えるほど丈夫だそうです。空き瓶と共に棄てたらイケないラベルなのですね。
出雲の和紙ラベルの酒に添えてくれた酒器がコレ。く~っ、金継ぎしてあってそこがまた素敵な景色。
形もいびつなのだ。野太く、複雑な味の「生もと無窮SAGA」を器で表現したらこの酒器だね、うん。
5)鴨ロースト。美しいピンク色の鴨肉ちゃん。鮮やかな黄緑のソースは何?ピンクと合うのだけど。「九条ねぎのソースです」と仰る。器との色バランスも絶妙ですわ。
ソースも秀逸。シャンピニオンと舞茸を砕いて作ったソース。香りもコクも力強い。粒々はタスマニア産のマスタード。大粒ですごく香るしプチプチの食感が楽しいです。
6)香箱蟹。ずわい蟹の雌。漁期が決まっている蟹なので、冬のふしきの限定。通常だとディナーは9品15000円おまかせコースですが、このシーズンは香箱蟹が入って9品17000円(税・サ別)です。
小さいボディながら濃厚な味の蟹肉。プチプチの外子とこっくりした内子の2ウェイの食感が楽しいのだ。無限に酒が進むゾ。我が家で食べる時は、香箱蟹を毟って形成するのはオットの役目。「この美しさ、見習いたい」(オット)うむ。がんばってくれたまえ。
香箱蟹に入ったところで、4種目の日本酒に義侠をお願いしました。
用意してくださった酒器がコレ。まあ!華やか。「金太郎飴のような作り方をするんです」と摩訶不思議なことを仰る。金太郎飴も気になるけど、ハッとする赤い土の色に惹かれました。
印象深かったので後で検索したのですが…人間国宝の作品だった~。(伊藤赤水氏)窯がある
佐渡市のふるさと納税返礼品でごじゅうまんえん、って(汗)お値段云々なんてふしきのさんは語りませんでしたが、ワタクシはゲス野郎なのでつい調べてしまい、後になってたまげました^^;
食べ終えた香箱蟹で甲羅酒。これは料理スタート時にいただくか否か尋ねられます。もちろんください!の我が家。値段は聞いてないから分からない。
ひとつで二度楽しめる香箱蟹。ほんのりと遠くで磯の香り。生臭さとは違うの。「炙ることで香りも味もでます。出汁が出ます」(お店の方)
ふしきのさんで選んで注いでくれた酒は神奈川の丹澤山。温めて飲むにはぴったりの酒。ところで、この甲羅酒を注いでくれた盃について、またもふしきの・・・じゃない、不思議なことを仰る。
ざらついた手触り。ちょこっと2箇所欠けていて、そこを金継ぎしてある盃。「山皿、とか山茶碗といわれる陶器で平安末期の物です。ぐい呑みのようですけど、何に使われていたかは不明」ええ?コレが800年生きている陶器ですって?盃にしか見えないけど違う用途だったかも、って?たぶん、ワタシはお口をポカンと開けていたと思う。粗雑な器だけど800歳。日本のアンティークにそういうカテゴリーがあるのね、と刺激になりました。
7)八寸。見事です。酒飲み人間の大好物大集合!
鮟鱇肝に刻んだ奈良漬けをトッピング。なまこ酢ともずくに山芋。北寄貝にかかる透明ゼリーは橙ゼリー。下に敷かれたのは柿のソース、という大胆な組み合わせ。
塩かずのこ、松風、こはだ酢漬け聖護院蕪、厚焼き玉子。すべて素晴らしいのだけど松風 loverとしては、ふしきのさんの松風はもったいなくて食べ進まないレベルに美味しかった。鶏肉と胡桃?無花果かなあ?人生数々の松風でも随一かも。
「穴子の煮凝り」も、もったいなくてジワジワと食べたわw器もツボ。
5種目の日本酒、宗玄。ふしきのさんは所謂カウンター割烹のように客の目の前で調理する姿を見せるスタイルではないです。向かって右手から現れてサーブしてくれます。これだと緊張し続けなくて済むなあ、とヘタレな自分などは思うのです。
宗玄に添えてくれた酒器。不規則な八角形で、パズルのように金で継いであります。底にあたる絵付きの部分だけが「古唐津です」と仰ったかなあ。底パーツをどうしても生かしたかったのでしょう、というお話。唯一無二の、不思議且つ妖艶な酒器でした。
時に京都に行くと、懐石料理屋さんや割烹料理屋さんで驚愕のお料理をいただいたりしていますが、都内で、こんなに丁寧で滋味深い日本料理店は久しぶり。食べる幸せを満喫した3時間でした。
そこに選りすぐりの日本酒が加わることで、料理がさらに引き立つという体験。逆に、日本酒に興味が無い方だとワタシとは違う感想になるのかもしれません。我が家ほどたくさん呑む必要は全くありませんが、日本酒の存在が大きい店です。(最後のお食事は鯛の胡麻茶漬け。鰹だしをたっぷりかけて。山葵、海苔をトッピング)
器好きには堪らん時間が過ごせますよ。ワタシ、近年は欲しい器に出逢っても「もう買わない、これ以上所有しない」と戒めています。こうして料理と共に銘品を使わせて貰えたので、シアワセなひと時でした。(柿とクリームチーズ。お菓子とお茶でクローズ)
また季節を変えて再訪したいふしきのさんでした。ごちそうさま。
〈記録メモ〉内訳不明で59200円のお支払い。コース料理17000円×2、ハートランド972円×2、日本酒6種、甲羅酒2+サービス料10%・・・と考えると日本酒は平均2000円ほど×6種だったのかな?