美山荘/夕食編@京都市/左京区花背
【前の記事より続き】
2019年5月26日(日)
夕食は、宿泊棟から道一本を挟んで建つ母屋でいただきます。宿泊客が三々五々集まってくる時間に合せて、打ち水されたアプローチ。清々しいお迎えです。
「名栗の間」に案内されました。コの字型のカウンター席です。
前回は襖絵がすばらしい座敷での夕食だったなあ。でもカウンター席は座り易いし、手彫りの床板がステキ。
最初の一献。たらの芽おひたしと共に。
鰹節の風味が濃い。たらの芽は苦くて春の味。美山荘は「摘草料理」と謳っています。高級な食材でもてなす方向ではなく、花背の土地の周辺で獲れるものを宿のセンスで美しくかつ美味しく差し出してくれます。そこら辺の物を美味に仕上げる技にハートを射抜かれるのが美山荘。
女将からの一献は当宿お馴染みの弥栄鶴(奥丹波)。今日も酒器のセンスにうっとり(最初の日本酒は料理に含まれています)
手籠に盛られて、山からのお届け物のような前菜。川海老と笹の子(根曲がり竹)には山椒の葉の香り付き。
猪口の中は「もみじがさ」という山菜。わさび菜のようにピリッと辛い。へえ、初知りの山菜です。
「卵黄の味噌漬」どろり、とろりとした黄身。
「栃餅こんにゃく」味がしゅんでいて、あられがまぶされて。コレ前回もおいしかったな。
「うるい味噌漬」の苦さと「稚鮎甘露煮」の甘じょっぱさが良いバランス。そして海苔巻きした蕨。
二葉葵の葉に感動してそのまま撮ってしまったが、葉の下の蕨が隠れてしまった~
このような品々を前にして瓶ビールを飲んでいる場合ではなく、日本酒へ。美山荘さんにはあらかじめ了解をいただいて4合瓶の持ち込みをお許しいただいています。
「ホワイトアスパラの白味噌椀」柚からしが天盛されているのを溶いていただくと全体が締まってより美味しい。
若狭湾産桜マスのお造り。「あえて厚目に切っています」と。確かに、食感を楽しめていいですね。山葵ではなく辛み大根で食べるお造り。パリパリに揚げた鱒の皮がオイシイ。お花は?「大根の花です」
「次は、摘草てんぷらです」と仰る。お披露目された春の具材に期待は爆上がり。
こごみや行者にんにくの山菜は楽しみだね。え、さつきの花があるのだけど?これも天ぷらの食材?
さあ、摘草料理の天ぷらがはじまるよ。
右から、いたどり、たらの芽。琵琶湖産のスジ海老と野にんじんの葉のかき揚げですって。
生で食べると酸味がある虎杖(いたどり)も、天ぷらだとほど良い酸味で春の風味。
かき揚げはクッキングペーパーごと油鍋に投入していたのが驚き(揚がった後、素手で剥がす)
サツキの花をてんぷらにするとは。ガラス細工か砂糖菓子のようなかわいらしさ。演出上手です。
左:こごみとタラの芽、右:こごみとこしあぶら
「使っているのは綿実油です。関東は魚が具材にあるので胡麻油がよろしいようですね。山菜には綿実油が一番やさしゅうございます」と仰る。なるほど。
行者にんにくはさすがに花背産という訳にはいかず、例外的に北海道産。風味がはっきりしているので最後に、と言い添えてくれました。
天ぷらはカウンターに設置された鍋にて目の前で揚げてくれ、即提供してくれる。その点に於いてはカウンター席は座敷個室席よりアドバンテージ高いのだな。
天ぷらにつづき、またもおいしそうな作業が目の前で。小型の七輪で筍を炙ってくださる。
たけのこ焼き。淡竹(はちく)です、と仰る。孟宗竹じゃないんだー。ワタクシ、都会っ子なので孟宗竹しか食べたことないかも。
器が筍の皮でしゅてき。熟成した豚の脂で炒めてます、と。ビッツ状の豚脂に山椒の若葉が合う!
濃い目の味付けが挟まると変化が出ますね。七輪で炙った香りも味のアクセント。
丹波牛がビーフシチューのような出で立ちで。「亀岡の平井牧場の牛肉です。山独活と花山椒です」
牛肉に花山椒。春のベストカップルです。
美しく串が打たれたアマゴちゃん。「赤い斑点がありまっしゃろ?やまめと違うことが分からはりますね」
カウンターの炭火で、塩焼きしてくれています。「アマゴは5月下旬から7月までがいっちゃん美味しいですね。6月半ばになると鮎が始まりますので、アマゴは日の目を見んようになりますわな」
美しく焼きあがったアマゴちゃん。みかんの酢で食べるという提案もはじめまして、です。
頭はカリカリ。表面は全身パリパリしているのに身はふっくら。ワタクシ、頭も骨も尾も、すべてを残さず食べちゃったわ。
次のプレゼンテーションも美しいわ。蓬生と菖蒲の葉の束が添えられて、テーマは端午の節句ですね。
さば寿司を粽仕立てにしてあるのでした。きっちりときれいに巻かれてはる。
紐をほどくと一口大の鯖鮨。笹の香りが移っているし、イイ感じに熟れています。
お口直しのガリも自家製なんだろうな。ひとり2個の粽寿司でウレシイです。鯖の身から透けて見えるのは、蓬生の葉を挟み込んでいるのだと思う。
御椀が登場したから、おしまいが近いのかしら。名残り惜しいわ。
「美山荘の生け簀で飼っている鯉です。大悲山の山水で育ってますので、お造りでも泥臭くないのですが、5月ですから鯉のぼりで」(スタッフさん)
鯉のぼり、つまり鯉を揚げています。添えられた色とりどりの野菜による豆腐が、えらく手の込んだ品で驚き。
茗荷、独活、かぼちゃ、2種失念、の5種を五色の吹き流しに見立てています。土台になる緑の豆腐はオランダからし(クレソン)で作った葛豆腐。出汁も鯉の頭から取っていると。お出汁も椀だねも椀妻もめちゃくちゃオイシイ!とオット絶賛。
炊合せは竹の子。蕗と新若芽が一緒に。ぷちぷちと鯛の子の餡かけ仕立てにしてあります。
土鍋で炊かれたご飯、おいしそう!「嫁菜ごはん」と言われた気がする。ヨメ菜ってなんだろ?と思いつつも珍しく質問しなかったのだけど。
後でぐぐったら、コレだった~➡(コトバンク:嫁菜)フツーにそこらの道端に生えている、まさに摘草、いや雑草だよね、コレ!いや、違和感なく美味しくいただきましたよ。
ご飯のお供用かな?琵琶湖の稚鮎、南蛮漬けも添えられたので 雑草 嫁菜ごはんはオカワリ。『春の若葉は食用』とコトバンクも言ってるから、どこかで見つけたら採取してみるかな。
デザートに美山牛乳の羹。小夏ソースでごちそうさま。
3時間に渡るお夕食を終えて、母屋を辞します。お向かいの客室棟へ戻りましょう。
料理の景色が美しくて、食材に工夫がしてあって、季節が感じられる。いつもの暮らしの中では食べる機会が無いものばかり。京都の山奥でいただくと、より一層のごうちそうです。
石楠花の間の月見台で夜風に吹かれ。
満足な夕食だったな。川の音と河鹿蛙の声を聴きながら。おやすみ。
【つづく:朝、ちょっとお散歩】
★★★★☆4.19 ■山里の野趣と都の風雅を併せ持つ「摘草料理」の名店 ■予算(夜):¥50,000~¥59,999
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