2022年5月某日
代々木上原の茂幸さん。初めて伺ったのは昨年末のこと。オットともども気に入って「もう一度行きたいね」となり、今回の再訪です。(
茂幸 公式HP)
小田急線代々木上原から徒歩の住宅街の只中という、都内では割と僻地な立地です。
それでも、お料理の良さと大将のセンス、居心地の良さですでに思うような予約は取り難くなっているのが現況。
最初の一献。茂幸では12バージョンの漆塗り盃から好きなひとつを選び、ウェルカムドリンクを頂戴する。
今日は春盛りに相応しく、山椒の酒。前回は迷って選ばなかった、冬寒を想起させるこの盃をチョイスしたよ。季節にそぐわないけどね。この銀泊とデザインが美しかったから。
1品目。浜防風とつぶ貝の和え物。肉厚にスライスされたつぶ貝。さわやかな苦みの浜防風。先付からして、大好物がタッグを組んできます。浜防風の風味は他の何とも違うんだよなぁ。
2品目。千葉勝浦産かつおのたたき。表面に火が入って、中央の赤色が美味しそうなたたき。ひとりに腹身と背身、違う部位の提供です。香味野菜のトッピングが薬味代わりかな。春→初夏の時分を感じます。
こうなるとビールは終了で日本酒へ。鶴齢の夏酒から始めましょ。尚、カウンター上の生卵およびキャベツ4分の1カットが気になる。彼らはこの後、どの局面で登場するのだ?
さらに、素揚げにしてある何かの魚がオイシソウすぎて気になる。この形状。あいなめ?
3品目にソレが椀だねになって登場。新生姜、小口切り青葱、麩と共に。椀だね類はもちろん、吸い地パーフェクト。「魚は何だと思います?」と大将からまさかのクイズ形式。結局、正解できなかったのが悔しいなあ。同じ魚を同じような形状で
美山荘で食べていたのだが。答えは今後のお客様へのネタバレになるから、ここでは明記しないでおこう。
4品目。あいなめの洗い。木の芽ソースがでらうま。丁寧にすり鉢をあてて作った白味噌仕立て。自分で作ってもこうはいかない。お外ごはんの醍醐味は、自分で何とか作るよりもはるかに上レベルを頂けること。拍子木切りの独活を追加してくださったので、木の芽ソースは残らずスイープ。
5品目。焼き太刀魚。海苔があしらわれて磯辺焼だ。
脂のりが良い。添えられた山葵+おろしが合います。「おろしをたっぷりつけてください。脂がのっているので、藻塩もキツ目にしてあります。」(大将)皮と身の間の脂が絶妙。
日本酒の方も、鶴齢→久礼→笑四季、と順調に飲み進んでいるのはいつものことでございます。
次は、螺鈿細工の梅がごっつう美しい椀。
6品目。梅蒔絵の蓋をとったら梅そうめんという仕掛け。椀の中身も美しいです。一番下が鮑のペーストなので、そこで螺鈿細工ともリンクするのでした。
ピンクの素麺と穂紫蘇がかわいいな。鮑のペーストに雲丹!という豪奢な組み合わせ。後から鰹+鮑の冷たい出汁を注ぎ入れてくれました。「罪悪感と共に、すべてをよくかき混ぜて召し上がってください」とご無体なことを仰る大将。こんなにキレイな椀、ぐちゃぐちゃにできませんが~^^;
折敷が大徳寺盆に替わったら、ここからが後半のはじまり。小引き出しがついた二段重にお酒のおともになりそうな小鉢が仕込まれた八寸が登場。(7品目)
ぴったりサイズに収まる小皿、小鉢たちがかわいらしい。引き出しサイズに合う器を探したのかしら?それとも、引き出しに合わせて器を作ってもらったのかしら?と、気になってまうw
大徳寺盆の上に降ろしていただきまーす。手前の山菜は、こしあぶら、独活の芽、しどけ(モミジガサ)、うるい、あいこ(ミヤマイラクサ)。添えられているのは、豆腐を裏ごしした様なソースだったかと。奥の小鉢は、こごみ胡麻和えと独活きんぴら。多彩な山菜で嬉しいなあ。山菜大好き。
8品目。たけのこ。土佐煮のような味付け。でも角切り。筍が育ってしまったので細かく切って繊維を切断した、ということだそうです。問題なく美味しいよ。
薔薇色の牛肉がスタンバイされたら、次は今日のメイン登場かなぁ。
どや!と言った量の花山椒。お肉と合わせてしゃぶしゃぶとなる。(花山椒はお高いので花山椒シーズンは通常のコース料金よりもプラスαになります)
おだやかな火加減の鍋の中、仲良くお風呂に入っているような牛肉ちゃんと花山椒ちゃん。ゆらゆらゆら…
花山椒のしゃくしゃく食感と痺れと香り。受け止める牛の脂の旨味。
意外なことに主役は断然、花山椒だ!
「この組み合わせ考えた人、天才ですねっ」(ワタクシ)その人とは「麻布 幸村」の大将なのは有名なお話。(ここ、茂幸の大将は幸村でお勤めの後この店を持ちました)尚、幸村の大将がお勤め時代に花山椒鍋を考案したのが京都の和久傳。過去に
高台寺和久傳に伺った時にもいただきましたわ。
花山椒と牛肉と出汁だけのシンプルな料理といえども、店が違えば味も全く違うんだなあ。茂幸は茂幸の花山椒鍋だった。高台寺和久傳とは違う仕上がりだったのが興味深い。
または、後につづくこの料理。花山椒しゃぶしゃぶ鍋の余韻でこんな変化球を。「肉じゃが」と大将は称された。こういったアプローチは高台寺和久傳には無いわけだし、茂幸ならでは。
着席時から気になっていた新キャベツ(焼いてある)は、ここで登場したのでした。素揚げジャガイモと一緒になって、デラ旨の花山椒しゃぶしゃぶのエキスを掬い上げる要員に。この鍋汁は旨いのだから余すところなく戴くのは正解よね。
締めのお時間到来。新生姜の釜炊きごはんが御披露目。
締めのご飯は2種用意されるのが茂幸のお約束。こちらは青豆。
「もう、おなかいっぱ~い、食べられな~い」と悲鳴をあげるのが正しい女子の在り方でしょうか?ワタクシ、美味しい物と対峙すると胃が潜在能力を発揮するので、ガッツリ食べましたyo。
2膳目の新生姜ごはんには生玉子をON。カウンターにあった生卵の用途はここでしたか。
多かった分はおにぎりにしてもち帰らせていただけます。本当は食べられたのだけど、翌朝改めて戴くおにぎりは、昨夜の美味しかった記憶がイッキに蘇るファクターになるのだ。
こうした体裁で。うれしいお土産でござる。
ホームメイドかなぁ?苺シャーベットにソーダを注ぐデザートでおしまい。
次回の予約をオットが入れていましたよ。また違った季節の美味を楽しみに、再々訪いたします。ごちそうさまでした。
割烹 茂幸 (代々木上原/割烹・小料理)
★★★☆☆3.53 ■予算(夜):¥20,000~¥29,999
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