2022年7月15日(金)
「えっと・・・京都の旅館に泊まるっていうのはどうかな。」(ワタクシ)あの俵屋。いつかは、と思いながらちょっと気後れしていた名旅館を誕生日に。
「じゃ、予約しておく」(オット)さっさと電話してくれたのは去年の夏のことだったかと。予約をありがとう、オットよ!俵屋さんの予約は初心者には少々敷居が高い気がするの。俵屋さんはフツウの旅館のようにHPを持たないので、ネット予約の術がないのだ。この時代にあって直電が唯一の予約方法よ。
ただし、JTBが押さえている客室がありまして。「竹泉の間」と「寿の間」。この2部屋なら
ネット経由で予約可能。でもワタシが泊まりたいのはその2部屋ではないんだな。全部で18室なのですが、すべて設えが違うのがこの手の老舗旅館。ワタシが長年「もしも俵屋に泊まるなら」と暖めていたのが「翠の間」。次点で「富士の間」です。
部屋を限定するだけでなく、ワタクシったら泊まる日まで決めていて祇園祭の宵々山か宵山の日。オットよ、実にピンポイントなリクエストですまん。そんなわけで、ワタシの誕生日は4月なんだが無理くり7月に予約してもらうという我がままっぷりでござる。恐縮である。
かくして憧れのお宿、俵屋旅館のお玄関に到着です。コンニチハ。予約しましたこにゃくうと申します。をを…創業300年超の老舗圧が強め。小心者なのでキョドってしまいそうです。
祇園祭シーズンに相応しく「洛中洛外図屏風」がお迎えしてくれる玄関。祇園祭の鉾やそれを引く町衆が細かく書き込まれてた下京の様子。
坪庭とその周辺の設えが思った通りの美の世界で、静かに感激しているところ。
ほぼ15時のチェックイン開始時刻に参上したところ、同じことを思う他の宿泊客と被ってしまった。「こちらでしばらくお待ちください」と案内されたラウンジ。ここで待つのならそれはそれで好都合。ジロジロ観察開始しちゃおう。
俵屋坪庭の夏設え。これは古い石臼を水鉢にしているのかな。白い鉄線と梶の葉を涼し気に浮かべるセンスよ。坪庭の設えは月ごとに変わる。春には桜が活けられ、秋には紅葉が盛られるのだろう。
やがてお部屋へご案内。鍵の手に曲がる廊下は薄暗いものの、行燈の灯がゲストを導いてくれる。こちらですよ、と。正面のコレは長刀鉾の真木(しんぎ)の模型だね。(長刀鉾は山鉾巡行の先頭を行く鉾。真木は鉾のトップを飾る部分)
長刀鉾を曲がったら「翠の間」あった。
更に奥は「桂の間」とパブリックのお手洗い(画像左)があるだけなので、部屋前を通過する人が少ない静かな位置に「翠の間」はあります。俵屋さんの構造は複雑で神秘的。ここを曲がるとどうなるの?みたいな鉤型廊下だらけ。わくわく楽しいぞ。
俵屋1階の見取り図こんなん。翠の間はまだ簡単な場所にある方だ。(さらに2階と3階もある)翠の間がある部分は明治4年(1871年)築だよ。
「翠の間」これがワタシが体験したかった空間です。
三和土の素材、色。竹材の縁側に夏仕様のお座布団。涼し気な設えになる夏に来てみたかったんだ。どこからともなく香のかおりが棚引く。
隅に置かれた行燈が素敵である。北大路魯山人デザインの行燈ですもの。そりゃステキだわ。
そこにいるだけで存在感ある行燈。
手入れされた庭。隙がない。中京で、すぐ北側が御池通りとは思えない空間です。聞こえるのは盛大な蝉の声ばかり。「シュワシュワシュワ…」関東人なのでクマゼミの鳴き声が新鮮です。
8畳のメイン和室。座卓に座椅子だけど、掘りごたつタイプになっていてお食事も楽でした。座椅子の横に紫紺色の四角いクッション。コレは座椅子と自分の背中の間に挟んで背もたれに使います。長時間座るのが楽で助かる。細かいご配慮。
お軸は「あまの川」『飛鳥井雅章。江戸初期の公家、歌人』とのこと。400年前の書なのね。
『七夕 同じく 星河秋典 (ということを)詠める 和歌 正二位 藤原雅章』『あまの川…』までは読めた。あとは読めんw 涼しそうな銀色の表装で梶の葉の葉脈が浮き出ている。7月にふさわしい仕立てのお軸だなぁ。
ワタシのような教えてチャンがいそうだから、こうして各部屋と旅館内の設えを表にしてくれている。これがなかったら、客室係さんは質問攻めに遭うわね。
李朝の箪笥の上に香炉。棚上にみごとな金蒔絵の硯箱。床の間から湧き出るオーラがこの部屋の空気を作っている気がします。
エアコンの送風口を隠しているのか?と思ったら違った。
「テレビはこちらに…」と客室係さん。うん、この空間でテレビは視界に入って欲しくないわね。
次の間ついてます。
このひと間があるかどうかでゆとりあるなしの印象がまったく違ったと思う。
就寝時はここにお布団敷かれる。ちな、夏の寝具は「麻ケット」と称する
俵屋オリジナル品。「これ一枚で不思議と寒くも暑くもなく丁度良くお休みいただける」と客室係さん。仰る通り、薄い麻布一枚なのに安眠できました。
次の間の隅にシエスタ用のマット。昼寝する暇など無いので手を触れることもなかったけど、俵屋お買い物サイトの
コレだと思う。
(枕とマットで24000円もするんか~)
この次の間から見える庭の景色も、また違った風情でいいな。夜は客室係さんが蔀戸を下ろしてくれます。
水回り行きます。襖を開けると麻暖簾のむこうがバスルームと独立したトイレ。
躯体は1800年代の物なのに、この水回りに到達するまで何度も改築を繰り返して来たのではなかろうか。
客室がトラディショナルでも水回りだけは今ドキ仕様であっていただきたいものね。
尚、基礎化粧品的コスメ類が一切置かれていないので女性は持参マスト。あるのは男性用ヘアートニックとシャンプー、トリートメントのみ。しかも2名宿泊なのに1セットだし。ナゼだ~ (´д⊂) コスメ類は見直しをしていただきたい。
足袋型ソックスがかわいい。使わなかったが頂戴して帰ろう。
浴室。扉を開けたら即、清々しい香り。高野槙の浴槽ってスゴイな!こんなにも芳しい。
到着時にはすでに熱々の湯が満々と。湯温は43℃とやや熱め。高野槙浴槽は保温力も凄かった。翌朝でも入れる温度をキープ。当然温度はさがっていたけど、十分入れたことに驚いたわ。
俵屋にはパブリックの浴室、いわゆる大浴場的なものは無い。でも、いつでも適温の湯にサクッと入れるお風呂が部屋に在っていいわ。
客室は陰と翳と仄明るさのコントラスト空間で、浴室は自然光が降り注ぐ明るい空間。このメリハリもいいな。
尚、お風呂場についてオットが感心したのはガラス張りの向こう側空間について。「雑草が、芽すら出してない。この空間を維持するために完璧に管理しているんじゃないか」と申します。あるね。俵屋なら、雑草一本たりとも許さないと思うよ。ガラスは一部、人が横になれば入り込めるスライド部がある。そこから出入りしてケアしているのでは?というのが我らの推理。見えないところで予想の斜め上を行く手入れをしていそうです。
浴室内と洗面台に1個ずつ置かれていた噂の俵屋石鹸。俵屋女将が花王と相談を繰り返して、香りと泡立ちを決めていったという俵屋渾身の石鹸がコレかー。
花王の三日月マークいた。『ベルガモット、ローズ、サンダルウッド、ジャスミン、パチュリー、ラベンダー、ラブダナブなどの天然香料に、ムスクなどの香り、二百余種類をブレンドして完成した物』との解説。和でありながらどこか洋も感じられる香り。人により好みがあるとは思うけど、スパイシーで品ある芳香だ。
冷蔵庫も俵屋には似合わないので、襖を開けたクローゼットの中に格納。無料です。当座の物しか入っていませんが、この宿に自販機は似合わないものね。ビールと爽健美茶しかいただかなかったけど冷蔵庫内フリーは嬉しい。
魯山人行燈の後方、パーティションで仕切られた小さな空間が秀逸。
DENと呼んだらよいのかな。デスクに向かって作業ができる小空間。引き籠り感MAXで居心地イイ。
灯が入った灯籠、蹲、青い楓の樹。うっとりである。
それでも一番好きな居場所は、やっぱりこの縁側。ここから見える庭の景色は完璧だもの。
翠色(すいしょく)だ。「翠(みどり)の間」とこの部屋が命名されたのがよく分かる景色。
夏に泊まりたかったのは日暮れが遅いから庭を眺めていられる時間が長かろう、という企みからです。思った通りの夏の夕暮れ。
翠の間の絵付解説。(この図が書かれた時から改装されているので現況とは異なる)『蛤御門ノ変で焼失の後明治の初めに建て直された。明治、大正、昭和、平成と骨格はそのままに時代に併せて其々の代の主人が少しずつ改修を重ねている。書院風から数寄屋風にと変遷の跡を見ル』蛤御門の変って1864年っすよ(驚)
ワタシ推しの翠の間三和土の図。『庭を室内に引き入れて部屋にいて庭ニ在ル思い』まさにソレ!とがっちり握手をしたくなった。隣室の方がまだチェックインする前に翠の間の庭に出てみたけど、この庭は室内から鑑賞することを計算して造られていると思ったわ。
俵屋の存在を知ったのが10代後半の頃だったかと。当時衝撃を受けたその雑誌は今でも持っています。ようやく夢が叶いました。長かったわw
<自分の為の備忘録として>鍵は1個。大浴場があるわけではないし、パブリックスペースも限られている。食事は夕朝とも客室なので1個でも問題ないかと。
ウェルカムスイーツはわらび餅。このわらびもちは極上品だったな。黒くてデリケートに延び、儚げ。トゥルンと喉に流れ込んでいく。コンビニよ、本物のわらび餅とはこーいう品を言うのだぞ。
俵屋旅館【 2022年最新の料金比較・口コミ・宿泊予約 】- トリップアドバイザー
俵屋旅館に関する旅行者からの口コミ、写真、地図をトリップアドバイザーでチェック!旅行会社の価格を一括比較してお得に予約をすることができます。俵屋旅館は、京都で85番目に人気の宿泊施設です。
- 関連記事
-