2022年7月15日(金)
京都の老舗旅館「俵屋」に宿泊中。
自室の「翠の間」はひと通り探索したので館内徘徊いってみましょ。
<つぼ庭>
玄関をあがって、まず客人の目が引き付けられるのはまずこの坪庭かと。陰翳を纏った玄関の先に、陽の光が落ちて明るい空間があるものだから、自然と視線はそこに誘われるという仕掛け。
古い石臼(?)の水鉢に、今日は梶の葉と鉄線が浮かんでいる。打ち水の加減も絶妙だなあ。
客室に置かれていた宿内案内、つぼ庭部分。『折節(おりふし)移行を花でめでる坪庭ノ花月次(つきなみ)』テーマは月ごとに変わります。(花は毎日活けていると思う)
俵屋7月の月次は宮中や公家の7月7日の行事、乞巧奠(きこうでん)。五色の布、お供え。坪庭の背後に下げられた五色の札も乞巧奠行事のアイテム。水鉢に浮かべた葉が梶なのは、乞巧奠では梶の葉に墨で願いを書いて下げたり水に浮かべるから。五色、願いを書いて下げる…から連想できる通り、七夕行事は乞巧奠が民間に広まったものです。
客室には、その月次が分かるように丁寧な案内が置かれていました。興味ない人なら月次の設えなどスルーかな。けど、ワタシが俵屋さんに求めていたのはこーいうところなの。
<ラウンジ>と<ライブラリー・高麗洞>
到着時に部屋に案内されるまで待機していた場所、ラウンジ。
ラウンジを飾るのも乞巧奠(七夕)に因むもの。お裁縫の上達を願ったことから五色の布と糸。歌や楽器のお稽古事の上達祈願も含まれたので琵琶のオブジェ。
ラウンジの奥がライブラリー高麗洞。ぐっと間口が低く作られた入口。茶室の躙り口のようだな。その効果か、お籠り感がある小部屋です。
窓が低く切られて、視線は下へ下へ。おのずと視線も下に向かい、立つよりも座ることで落ち着く空間。
案内のスケッチ。『全体ヲ韓紙で張り込ム』『繭玉ノ中ニ居る心地』ああ、だから高麗の洞なんだね。韓紙を通して届く光が柔らかいよ。
置かれている古い書物が気になるし、あとでゆっくり来よう・・・と思ったが、高麗洞大人気。いつ行っても誰かが座っていて。ひと声かけて同席してもいいのかもしれないけど、このお籠り感の中に後から参入するのは躊躇われ。結局、堪能できなかったのが心残り。
<ギャラリー>
いわゆる売店。おしゃれ空間を売店などと括ってはいけませんかねwギャラリーですってば。
俵屋オリジナルの品々を販売中。隣接するショップ「遊形」
(ゆうけい)で販売する品々を宿内にも展示したコーナーです。宿のHPは無いのだけどグッズショップのHPはあるよ(
ギャラリー遊形)
ギャラリー遊形は俵屋を出て、姉小路に面してあります。宿泊者は5%割引だったよ。(宿泊から1ヵ月有効の割引カードをくれる)
俵屋石鹸。部屋に2個置かれていたな。3個で838円(税込)だったんだー。思ったより手ごろ価格だ。オリジナル石鹸だと1個1000円とかフツーだから。
コレ、夕食時に使われたグラスたちだ。
(夕食については別記事で)グラスまでも宿のコンセプトに合うようデザインして、製作してもらった作品なんだね。すごいこだわりだな。

一晩泊まってこのギャラリーを見たら、ほぼすべての備品や器がオリジナルだったと気付きました。コンセプトに合わない物はひとつとして置いておきたくない、という強めの意思を感じます。
<庭座>
ギャラリーのさらに奥へ廊下を進むと、庭側に飛び出た小部屋が現れました。
平面図には「庭座」って。座って庭観る、ってことかな。
色の選び方よ。ガラスの向こうの木製塀とシートが同系色。この鯉、さりげなく棟方志功。
この小さなコーナーは廊下のレベルよりも一段下がっている。ガラス窓が下部まで張られているので、ローチェアに座ると地面に近い視点から庭を眺めることになる。
地面の草がすぐそこに。ガラスの掃除が完璧なので、庭の中に座しているかのよう。いいなあ、このお籠り感。我らは庭付きの部屋だけど2階、3階のお客様だったら庭座に来れば低い視線も楽しめるね。
非常にステキな場所なのだけど、喫煙室にもなっているのが惜しい。タイミングが悪いとクサイんだもの(涙)
パブリックのコーナーは以上。
「庭座」から先は新館と呼ばれる建物に繋がっていました。RC造なので、ここからイッキに雰囲気が変わる。自分らの「翠の間」界隈とは異なり過ぎていて、正直「新館の部屋をチョイスしなくてヨカッタ~」と確信しました(ワタシの好みの話です)
新館の部屋にはベッドタイプもあり。RC造だからお子様連れも足音気にせず泊まれるなど、メリットもあるから新館指定される方もいることでしょう。でも、このアプローチを通って部屋に案内されたら思っただろう。「ワタシの俵屋はコレじゃない」
同じ2階でも、本館の2階はこうだもの。ワタシ的には断然、こっちがアガル。木造故に、正面に下げた梶の葉もしっくりきているかと。
本館2階。時代劇の旅籠セットではないよ。タイムスリップして150年前の旅館にいるかのよう。素敵過ぎてクラクラする。
完璧な清掃。磨き上げられた階段。手摺りの細工は手彫りでしょう。イイ感じの使い込まれ感で、何年ここにいるのかしらね。
尚、本館2階には「アーネストサトウ・スタディ」と命名されたラウンジがある。オープン時間が限定されているので(17時~22時)我らは利用するチャンスを逸してしまったのが無念。
俵屋当主の御主人アーネスト・サトウ氏(故人)の書斎を再現したというラウンジは調度品も家具も一級品、と評判。お茶とお菓子をいただきながら洗練された空間を愉しめるそうだよ。
陰翳の中で、いにしえとモダンが綾のようになっている宿です。ひょい、と覗くその先に舞台装置と季節を愉しむ仕掛けが待っているパブリックエリアでありました。
俵屋旅館[京都]|美意識が凝縮された日本旅館の最高峰
確かな伝統と、美を極めた新しい洗練。一流のもてなしに和み、至福の時が流れる京都の迎賓館。
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