2022年11月26日(土)
琵琶湖北部のオーベルジュ、湖里庵に宿泊。夕食のお時間です。
客室と同様、湖面がバーン!と広がるダイニング。この景色を堪能していただきたい、という趣旨から湖里庵の夕食スタート時間は午後5時から、と早い。
11月も下旬だったので、17時では速攻で真っ暗になってしまいましたが。我々はカウンター席へ。
4名着席のテーブル席もあるよ。他、8名まで可能な個室もあります。
我々は1泊2食付ひとり50000円で宿泊していますが、夕食利用でご来店の方々は同じコース料理が15000円です。
切子グラスの食前酒でスタート。地元、冨田酒造の日本酒スパークリングawaibuki。
1品目。柿の白和え。おもしろいな。まるでフルーツカクテルにアイスがONしたデザートのようだ。
スプーンを使って自分で混ぜ混ぜして食べる白和え。マキノ町の山手で採れる良質な柿、と仰る。そして銀杏、むかご、胡瓜。白和えって和え衣で食材は隠れてしまうものね。見せ方が面白い白和えだわ。好印象のスタートです。
2品目。吹き寄せ八寸。お酒のおともだちが色々。しかも美しく。さっそく、当店の主役である発酵食品や琵琶湖の幸がやって参りました。
柚子釜に入っているのは琵琶湖の氷魚。鮎の赤ちゃんです。ちっちゃい体積ながら旨味があって、ふっくらとしているよ。有機南瓜すり流しはひと口の量ですが、出汁の濃さでインパクトあり。鴨ロースと丸十。琵琶湖の手長海老。来たぞ、鮒寿し。「完成した鮒寿しを酒かすで漬け直したもので食べやすい」と店主様。
手前の物体は鮎の背越し、南蛮漬け。やさしい酢加減だわ。金色の小皿は2年熟成の鮒寿しの共和え。「発酵した御飯と、旨味が強いしっぽの部分を混ぜた」と仰る。パクパクと食べ進める物ではない。酒と共にチビチビと啄んでいくのに丁度良い塩味と酸味。八寸盆から外して、以後日本酒の合いの手に。
そういったいった八寸メンバーですから、日本酒でしょコレ!となりますわね。今宵、このダイニングの真上に寝床があるってシアワセだ。いっぱい呑んだろ。
ドリンクのメニュー表。割とペラ紙。んで、値段書いてないアレね。値段分からないとイヤな汗が出ますよねw
我らが飲んだ酒で言えば、生ビール 900円、松瀬酒造 松の司 黒松 1合1500円、七本槍 純米 1合1000円、萩の露 雨垂れ石を穿つ 1合1000円、上原酒造 不老泉 1合1000円、松瀬酒造 きもと純米 1合1000円…といった価格でした。すべて税サ別。
3品目。お椀。枝豆のすり流し仕立て。椀だねは軽く揚げたニゴイと冬瓜。やってしまった!画像撮り忘れ(号泣)椀の蓋を開けた瞬間、出汁の香りが立ち上がる丁寧な御椀だったのにぃ。天盛につるむらさきの花。紫色の粒がかわいかったな。ニゴイはアイナメに似ている口当たり。はじめて食べる湖魚です。
「ニゴイは鯉に似ているから似鯉となったとか。鮮度落ちが早いので京都へも運べないことから’京しらず’とも。流通にも乗らないし、この辺りでも食べる人は少ないですね。骨が多いから。鱧のように骨切りして食べられるようにしました。」出汁が良いうえに下仕事が丁寧なので美味しくいただけた。旨味ある魚だなぁ。この土地、この店だからいただけたニゴイということか。
4品目。鯉お造り。よーく冷えた温度で提供。まったく臭みなく、旨味がメチャ乗っています。添えられたチリ酢もおいしいから、合わせるとシアワセだ。この土地の水の良さが鯉の旨さに直結しているのかな、と思う。
5品目。鮒ずし餅。炙られた鮒寿しは、レアとは異なる香りを放ちます。こうばしい香り!
もち料理のひとつに、からすみを包んだ
からすみ餅があります。鮒寿しも餅に親和性があるのね。餅の下に薄切り大根が敷かれていて口の中をサッパリに戻してくれます。「お好みで大根で巻いて食べていただいても」(店主様)
加熱された鮒寿しからは乳酸をより感じます。鮒寿しはしょっぱくて臭い食品と思われ勝ちだと思いますが、違うなぁ。旨味の塊りです。鮒寿しは2年漬けても生ものなんです、と店主様。奥が深い。
日本酒3種目。
福井弥平商店の
雨垂れ石を穿つ。客室の冷蔵庫内に入っていたので部屋でも飲んでいます。ワタシの好きなタイプの日本酒でした。
(客室冷蔵庫内ドリンクはフリー)
蔵元さんのメッセージが熱い。地の料理には地の酒が合うのだ。
6品目。びわ鱒の卵+新米の小丼。「琵琶湖の宝石です。この時期はアメノウオ(雨の魚)と名を変えて産卵に入っています。軽く塩漬けにしました。」(店主様)通常は揚げ物の局面ですが、今日はびわ鱒たまごが入ったので…というお話です。ラッキー!
鮮度よく、ぷちぷち食感。小粒なのに味が濃いや。鮭イクラの様な粘りがないんだね。
芽葱の辛さとよく合います。この時期、ここでしか食べられないちいさな丼。大きな満足感。
日本酒4種目。不老泉 山廃純米吟醸。ラインナップすべてを地元の日本酒で固めていて嬉しくなります。
7品目。鮒寿しのパスタ。濃厚カルボナーラ風に仕上げてあって驚きのひと皿。「鮒寿しは和のチーズとも言われるのでパスタに合わせました」(店主様)オットチョイスの↑不老泉山廃が合うわ。我が家の日本酒ソムリエ、いい仕事してます。
鮒寿しの御飯も入っていて、それがアンチョビの役目を担ってくれるのだって。際立つのは酸味。そこがただのクリームパスタと違っていて、さらに多彩な味を楽しめていると思う。マッシュルームの存在も大事。「9月にNHKあさイチで紹介されて問い合わせが増えています」(店主様)大盛で食べたい…
8品目。鮒寿しのお吸い物。かわいらしい柄の蓋物が登場。
底に沈んでいるのは鮒寿しの頭です、と。またも驚かされる。硬くて食べられない頭部だけど、2年発酵させることで柔らかくなっているのだそうです。
鮒寿しの頭2年熟成。味わい深い珍味なのだが、見ようによってはグロいので、ぼかし加工など入れてみた(忖度)wおいしいんだよ~。吸い地の中で酸が徐々に溶けて広がっていくんだ。「その変化を楽しんでください」(店主様)
9品目。本もろこ炭火焼。3尾の本もろこを3通りの風味で供してくれます。まずは塩だけで。小さいボディなのに味わいがデカい。
「旬は冬です。寒もろこと言うくらい。春に産卵するので冬は脂を貯めます。この時期だと、焼いていると脂が出てきて揚げたかのように」(店主様)ゴールデンウィークころに産卵したら琵琶湖沖の深い水域に行ってしまい、獲れなくなるそうです。
2尾目は生姜醤油焼きで。たしかに体表がパリッとした焼き上がりで、その食感も旨い。この地域は生姜醤油が主流で、南下すると酢味噌で食べるそうだ。同じ琵琶湖沿岸でも食文化に違いがあるのね。
3尾目の本もろこは山椒醤油味で。山椒はこの近郊の山の物で醤油も通り沿いの醸造所の品。地元の食材で、という心意気が旅行者にはウレシイです。5種目の日本酒は松の司 きもと。
10品目。鮒寿し茶漬け。文字通りの簡単な料理だけど、鮒寿しの温度が上がるからコク味と酸味が引き立つなぁ。
添えられた琵琶湖産ごりの山椒炊きと蕪のお漬物。お茶漬けの共とは言えど美しいしおいしい。細部まで手を掛けておられると感じ入りました。
11品目。わらび餅と栗きんとん。驚いた。目の前で店主様がわらび餅を手作り。おしゃべりに付き合ってくださりながら、魔法の様にサクサク仕上げていく。出来立てであたたかいわらび餅にほっこりだ。
未知の食材、はじめての料理法。美味しいだけでなく美しい。驚きと感激の2時間半でした。「近くには大先輩の徳山鮓さんと比良山荘さんがおられ、仲良くお付合いさせていただいています。」(店主様)滋賀県はスゴイな。滋賀三大巨頭とでも言えまいか。
(当ブログ内の徳山鮓記事/比良山荘記事)
この海津という場所は、実は北上すると日本海まで30分の近さなので、昔は海の魚も扱っていたそうです。が、湖里庵の個性は何なのかと考えた時「琵琶湖の魚だけにこだわる」ことにアイデンティティを見出した、とお話くださった。
「湖里庵に来たら食べられるもの、湖里庵に来なければ食べられないものを名物料理として考えなさいよ」という遠藤周作氏からのアドバイスをみごとに実現させておられるとワタシは思う。徳山鮓、比良山荘のように猪、鹿、熊は提供されませんが、「湖のジビエにこだわります」と店主様は仰った。そうか。ジビエは湖にもいるんだ。琵琶湖のジビエ、ごちそうさま。
湖里庵 (マキノ/懐石・会席料理)
★★★☆☆3.99 ■予算(夜):¥15,000~¥19,999
- 関連記事
-